依存症基本知識
アルコール
1. アルコールの基礎知識
飲酒量の単位
アルコールは体のさまざまな部位に作用することが知られています。ここでは酔いと中枢神経の作用部位について解説します。
1. 酔いについて
酔いの効果は血液中のアルコール濃度によって異なります。血中濃度が低いと脳の抑制がとれて活発になりますが、ある程度の濃度を越えると逆に鎮静効果の方が強くなって小脳の機能が低下して呂律が回らない、まっすぐ歩けないといった運動機能の障害がみられるようになり、さらに濃度が高まると意識障害を起こして最悪の場合には死に至ります。どのくらいの血中濃度でこれらの効果が現れるかは、個人のアルコールに対する感受性などによっても異なりますが、少量の飲酒は活発になったり不安感を減らしたり陶酔感をもたらすといった効果があるためコミュニケーションの潤滑剤のような使われ方をされます。
表1. 血中アルコール濃度と酔いの程度(文献1より改変)
20~40 mg/dl | 気分さわやか、活発な態度 |
50~100 mg/dl | ほろ酔い気分、動きが活発になる |
110~150 mg/dl | 気が大きくなる、立つとふらつく |
160~300 mg/dl | 歩行障害(千鳥足)、同じ話の繰り返し |
310~400 mg/dl | 起立・歩行困難、言語滅裂、意識が不明瞭 |
410mg/dl~ | 昏睡状態、尿失禁、呼吸停止、死亡 |
2. 中枢神経の作用部位について
いわゆる精神安定剤は作用する神経伝達物質の結合部位(受容体)が決まっていて特定の受容体に働いてその効果を発揮します。ところが、アルコールの作用部位については特定の部位がありません。しかし、通常飲酒する程度の濃度ではアルコールは受容体を構成する蛋白に結合して機能を変化させることが示されています2)。神経伝達物質に及ぼす影響としては中脳辺縁系や側坐核におけるドパミン放出の増加が有名です3)。その他、興奮性アミノ酸受容体(NMDA)やGABA受容体などがアルコールの影響を受けるとされます。
参考文献
1.アルコール保健指導マニュアル研究会:健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル 社会保険研究所、東京、2003
2.Li CY, Peoples WR, Weight FF: Alcohol action on a neuronal membrane receptor: evidence for a direct interaction with the receptor protein. ProcNatlAcadSciUSA 91; 8200-8204, 1994
3.Weiss F, LorangMT, Bloom FE, Koob GF: Oral alcohol self-administration stimulates dopamine release in the rat nucleus accumbens: genetic and motivational determinants. J PharmacolExpTher 267; 250-258, 1993
著者
松下 幸生