依存症基本知識
アルコール
1. アルコールの基礎知識
飲酒のガイドライン
1. 適度な飲酒とは?
当ホームページの性格上、飲酒の悪い面が強調される傾向がありますが、もちろん飲酒は悪いことばかりではありません。適度な飲酒で人生に彩りを添えたいと考える方もいらっしゃるでしょう。。そこで問題なのは、「適度な飲酒」とはいったいどの程度なのかという点です。(アルコール依存症者は生涯断酒が必要ですので、このページの内容は当てはまりません)
2. 三つの指標
ここでは厚労省が設定している三つの指標をご紹介します。
1) 節度ある適度な飲酒
2012年までの国民健康づくり運動であった健康日本21<第1次>にうたわれていた指標です。通常のアルコール代謝能を有する日本人であれば、節度ある適度な飲酒は1日平均純アルコールで20g程度(日本酒1合)(純アルコール換算については飲酒量の単位を参照)とされました。この基準は、国内外の大規模な研究から、アルコール消費量と総死亡率を検討して割り出されたものです。
しかし、以下の但し書きにもご注意ください。
・女性はこの1/2~2/3程度が適当です
・酒を飲んで赤くなる者はさらに量を控えてください
・高齢者も量を控えてください
・元来酒を飲まない方に飲酒を推奨するものではありません
2) 生活習慣病のリスクを高める飲酒量
これは、2013年から始まる健康日本21<第二次>で設定された目標です。
国内外の研究結果からは、がん、高血圧、脳出血、脂質異常症などの飲酒に関連する多くの健康問題の危険性は、1日平均飲酒量とともにほぼ直線的に上昇することが示されており、飲酒量は低ければ低いほどよいとされています。
一方、全ての要因による死亡率、脳梗塞及び虚血性心疾患については、飲酒量との関係がほぼ直線的に上昇するとは言えません(飲酒とJカーブを参照)。しかし、その場合でも、男性では44g/日(日本酒2合/日)程度以上の飲酒(純アルコール摂取)で非飲酒者や機会飲酒者に比べて危険性が高くなり、女性では22g/日(日本酒1合/日)程度以上の飲酒で、危険性が高くなります。
このような研究結果を受け、生活習慣病のリスクを高める飲酒量については、男性で1日平均40g 以上、女性20g 以上と設定されました。
3) 多量飲酒(1日に平均純アルコールで約60g(日本酒3合)を越える飲酒)
第1次の健康日本21で設定されていた指標です。
このレベルは健康への悪影響のみならず、職場での生産性の低下など社会的な問題も無視できなくなります。完全に「アウト!」のレベルです。
まとめると、男性で飲める方でも、1日に日本酒1合程度に抑えましょう、日本酒2合だと病気の恐れがでてきます。3合以上の飲酒は論外です!
3. 豆知識
Q:昔みのもんたさんが赤ワインは身体によいと言っていましたが…
A:確かにそのような研究報告もありますが、そうではないという報告もあります。一般的には「アルコールの身体への影響はお酒の種類によらず、飲んだ純アルコール量により決まる」と考えられています。赤ワインなら、地酒の○○なら身体に良いから多めに飲んでも大丈夫、とはなりません!
Q:赤くなる人はなぜ酒量を抑える必要があるのですか?
A:フラッシング反応について、酒に強い・弱いをご参照ください。
Q:私の周りは皆、毎晩日本酒3合以上は平気で飲んでいます。これくらいが普通では?
A:確かに、地域や家庭によってはそのような方もいらっしゃるでしょう。昔からの習慣には良い点もたくさんありますが、改善すべき点もあります。味噌汁を薄味にしたり、喫煙を止めるのと同様、お酒との従来の寛容すぎた付き合い方についても、私たちは変えていく必要があります。
全く吸わないのが最も良いタバコに比べて、少量なら許容されるお酒との付き合い方は難しい面があります。「節度ある適度な飲酒」ではおさまらないという方は、いっそのこときっぱり止めてしまうこともご検討ください。禁酒はとても効果的で安上がりな健康法です。
参考文献
著者
瀧村 剛