依存症基本知識
アルコール
6. 飲酒問題対策
飲酒と自殺
ここでは、国の健康づくりの政策である健康日本21<第二次>において、アルコールがどのように取り上げられているかについてご説明します。
1. 健康日本21とは
我が国では、1978年より、「国民健康づくり対策」がそれぞれの時代の要望に基づきながら数回に分けて実施されてきました。2000年から始まった3回目の国民健康づくり対策が(第一次)健康日本21で、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸を目標とし、2012年に終了しました。その中でアルコールに関する目標と運動終了時の結果は下記のとおりです。
1) 多量に飲酒する人の減少(多量に飲酒する人=1日平均純アルコール約60gを超えて摂取する人)→純アルコール換算については「飲酒量の単位」を参照
2) 未成年者の飲酒をなくす(月1回以上飲酒をする者の割合)→未成年者の飲酒については「アルコールと年齢」を参照
3)「節度のある適度な飲酒」の知識の普及(節度ある適度な飲酒:1日平均純アルコールで約20g程度の飲酒) →「飲酒のガイドライン」を参照
2. 健康日本21<第二次>での目標
2013年度より、健康日本21<第二次>が始まります。地域による健康格差の縮小や飲酒を含めた生活習慣の改善が目標となります。<第二次>における飲酒の目標は下記のとおりです。
1) 生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者(1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g 以上、女性20g 以上の者)の割合の減少
がん、高血圧、脳出血、脂質異常症などの飲酒に関連する多くの健康問題の危険性は、1日平均飲酒量とともにほぼ直線的に上昇することがわかっており、生活習慣病を防ぐためには飲酒量は低ければ低いほどよいのです。
一方、全ての要因による死亡率、脳梗塞及び虚血性心疾患については、飲酒量との関係がほぼ直線的に上昇するとは言えませんが(飲酒とJカーブを参照)、その場合でも、男性では44g/日(日本酒2合/日)程度以上の飲酒(純アルコール摂取)で非飲酒者や機会飲酒者(たまにしか酒を飲まない者)に比べて危険性が高くなります。また、女性では22g/日(日本酒1合/日)程度以上の飲酒で、危険性が高くなります。
一般に女性は男性に比べて肝臓障害など飲酒による臓器障害をおこしやすく、アルコール依存症に至るまでの期間も短いことが知られています(アルコールと性差を参照)。このような男女差、国内外の研究成果等を検討し、摂取量の目安として国民にとってわかりやすい指標とすることを目指して本指標を設定しました。
2) 未成年者の飲酒をなくす
未成年者の飲酒は、体内に入ったアルコールが身体の発達に悪影響を及ぼし健全な成長を妨げること、臓器の機能が未完成であるためにアルコールの分解能力が成人に比べて低くアルコールの影響を受けやすいこと等の理由から、好ましくありあません。このような健康問題のみならず、未成年者の飲酒は事件や事故に巻き込まれやすくなるなど、社会的な問題をも引き起こします。もちろん、法的にも禁じられています。
3)妊娠中の飲酒をなくす
妊娠中の飲酒は、胎児性アルコール症候群(アルコールの影響で胎児に脳の発達障害等がおこる疾患)や発育障害を引き起こすため、妊娠中あるいは妊娠しようとしている女性はアルコールを断つことが求められます。
なお、授乳中も血中のアルコールが母乳にも移行するため飲酒を控えるべきです。
3. おわりに
飲酒は飲酒者本人だけでなく、家族や親類、近隣住民など他者に悪い影響を及ぼすことが多く、この悪影響には健康問題のみならず飲酒運転、家庭内暴力等の社会的問題も含まれます。国民健康づくり対策としての健康日本21(第二次)の推進に当たっては、このような社会的問題にも目を配っていく必要があります。
参考文献
1.健康日本21 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkounippon21.html
著者
瀧村 剛