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依存症基本知識

アルコール
1. アルコールの基礎知識

フラッシング反応について

フラッシング反応についてご紹介するためには、まずアルコールの体内での分解(図1)についてご理解いただく必要があります。

1. アルコールの分解 
アルコールは肝臓で主にアルコール脱水素酵素(ADH)の作用によってアセトアルデヒドに分解されます。このアセトアルデヒドという物質が身体にとっては有害な物質で、フラッシング反応を起こすだけでなく、発ガン性のあることが知られています。アセトアルデヒドは主にアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)によって酢酸へ分解されます。ALDH2遺伝子には東洋人の場合は遺伝子多型があって酵素の働きが強い人、弱い人、全く働かない人の3通りに分かれます。

図1. 体内のアルコールの分解過程 

2. フラッシング反応とそのメカニズム 
ALDH2の働きが弱い人、全く働かない人では少量でも飲酒するとアセトアルデヒドが分解されずに蓄積するため、飲酒すると様々な反応が起こります。典型的には顔や身体の皮膚が赤くなる(フラッシング)、ほてり感、頻脈、血圧低下、気管支収縮、アレルギー反応、吐き気、頭痛などです。このような反応をフラッシング反応と呼びます。 
フラッシング反応の原因は飲酒後に産生されたアセトアルデヒドが分解されずに、身体に蓄積されてしまうためですが、アセトアルデヒドがフラッシングを起こすメカニズムは、十分に解明されていない点もありますが、アドレナリンなどのカテコールアミンの増加、モルヒネ用物質、プロスタグランディン、ヒスタミン、キニンなどの物質が関与すると考えられています。

3. フラッシング反応と体質について 
フラッシング反応が起こる・起こらないは遺伝によって決められた酵素の強さによるものです。従って、訓練で変わるものではありません。この体質は酵素の遺伝子を調べることで確認できますが、簡単に調べるには簡易フラッシング質問票があります。「現在、ビールコップ1杯程度の飲酒ですぐ顔が赤くなる体質がありますか。」「飲み始めた頃の1-2年間はそういう体質がありましたか」という2つの質問に両方とも当てはまればフラッシング反応ありとします。40-79歳の男女とも90%の感度と特異度でALDH2の働きの強さを推測することができます。 
フラッシング反応は飲酒した後の身体の反応というだけではありません。フラッシング反応が出るということはその人がALDH2の働きが弱いか、働かない体質ということです。このような体質の人が習慣的に飲酒すると食道癌や頭頸部癌(口腔、咽頭、喉頭)の発生が高いことが知られていますので、フラッシング反応の起こらない体質の人より飲酒量や飲酒頻度を少なくすることが必要です。アルコールとがんについての詳細は情報ボックスの「アルコールとがん」の項目をご覧ください。

参考文献

  1. Eriksson CJP. The role of acetaldehyde in the action of alcohol (Update 2000). Alcohol Clin Exp Res 25: 15S-32S. 2001.
  2. 樋口 進ほか. 健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル. 社会保険研究所, 東京, 2003.

著者
松下 幸生


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