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依存症基本知識

アルコール
4. 飲酒問題の早期発見・早期介入

スクリーニングテスト

スクリーニングテストは簡単ないくつかの質問に答えることで、アルコール依存症や問題飲酒の危険度の高い人を選別する検査です。大勢の中から、飲酒問題が大きい人たちを見つけ出し、早期の発見や介入に繋げていくことを目的としています。多くの医療機関、職域や地域で問題飲酒者を簡便に早期に発見、評価するために用いられています。

国内で一般的に用いられている代表的な3つのスクリーニングテストを以下に記します。これらはすべて質問表による自己記入式のテストであり、10項目以下の少ない設問から成り、対象者に負担や時間をかけることなく実施できることが利点です。基準点に沿って判断すれば良いので、専門家の存在も不要です。 
実際にスクリーニングテストを使用する際は、対象とする集団の特性を考慮して、アルコール依存症を判別したいのか、もしくは少しでもアルコールの問題のある人を見出したいのか、などの目的に応じて使い分けることが重要です。

1. KAST (Kurihama Alcoholism Screening Test)
1976年に首都圏の一般人口を対象とした調査をもとに標準化されたアルコール依存症を選別するための検査です。2003年に全国の一般人口からの回答とアルコール依存症で初回入院した患者を対象とした結果から大幅に改訂されました。CAGEやAUDITと比較して、同等かそれ以上のアルコール依存症に対する高い弁別能力があることが確認されました1)。 
男性版は10項目からなり、4項目以上当てはまれば「アルコール依存症の疑い」、1項目~3項目が該当すれば「要注意」と判定されます。女性版は8項目からなり、3項目以上で「アルコール依存症の疑い」、1項目~2項目で「要注意」と判定されます。

2. CAGE
4つの質問からなる単純なアルコール依存症を選り分ける検査です。4項目のうち2項目以上当てはまればアルコール依存症の可能性が高いとされます。回答の対象となる期間が特定されておらず、調査時点までの半生を対象期間とします。わが国の職域の健康診断において敏感度77.8%、特異度92.6%という結果が得られています2)。 
4つの質問がそれぞれ1) 減酒(Cut down)の必要性、2)他者からの批判への煩わしさ(Annoyed)、3) 飲酒への罪悪感(Guilty)、4) 朝の迎え酒(Eye-opener) について尋ねており、頭文字を取ってCAGEと呼びます。

3. AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)
世界的に使用されているアルコール関連問題の重症度を測定する検査です。一般的にはcore AUDITと呼ばれる10項目の質問が用いられます。質問1~3で現在の飲酒量や飲酒頻度を確認し、質問4~10で過去1年間に生じた飲酒に関連した問題の有無をチェックし、各質問の点数を合計します。 
多くのスクリーニングテストがアルコール依存症を識別するために考案されているのに対して、依存症の識別のみならず、将来的に飲酒問題が進行する危険のある飲酒者の同定も目的としていることが特徴です。閾値の設定は国や地域において様々ですが、わが国においては8~10点以上で何からの問題飲酒が指摘され、15点以上でアルコール依存症が疑われます。 
アルコール消費量、他のアルコール依存症のスクリーニングテストやγ-GT,%CDTなどの生化学的マーカーとの有意な相関が認められ、さらには家族歴や飲酒による身体的、精神的な結果とも関連していることが報告されています3,4)。プライマリ・ケアにおける問題飲酒者の同定に関する調査では、AUDITは生化学的マーカーよりも敏感度、特異度ともに断然優れていました。

参考文献

  1. 樋口進:成人の飲酒実態と関連問題の予防に関する研究(平成16年度総括研究報告書、樋口班),厚生労働省科学研究費補助金健康科学総合研究事業,厚生労働省,2005; 1-18.
  2. 廣尚典: CAGE,AUDITによる問題飲酒の早期発見. アルコール関連障害とアルコール依存症. 日本臨床 1997;55(特別号):589-593.
  3. Bohn MJBabor TFKranzler HR. The Alcohol Use Disorders Identification Test (AUDIT): validation of a screening instrument for use in medical settings. J Stud Alcohol. 1995 Jul;56(4):423-32.
  4. Coulton S, Drummond C, James D, Godfrey C, Bland JM, Parrott S, Peters T; Stepwice Research Team.Opportunistic screening for alcohol use disorders in primary care: comparative study.BMJ. 2006 Mar 4;332(7540):511-7.

著者
吉村 淳


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