依存症拠点機関事業

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アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症の改善を目指して

依存症基本知識

アルコール
4. 飲酒問題の早期発見・早期介入

簡易介入方法

2008年に実施された国内の飲酒実態調査によると、1日の飲酒量が純アルコール換算で60グラム(ビール500ml缶3本または日本酒3合弱に相当する量)以上を飲む多量飲酒者は男性の12.0%(601万人)、女性の3.1%(165万人)と推計されています。さらに、AUDITという世界的に使われているアルコールに関連した問題のスクリーニングテストで8点以上の問題のあることが疑われる人は男性の22.8%、女性の3.8%が該当していました。このように男女を問わず多くの人が飲酒に問題を抱えていると考えられます。 
アルコール依存症は精神科の病気ですが、依存症の方も飲酒を始めてすぐに依存症になってしまうわけではありません。どのような病気にも当てはまることですが予防が大切です。特にアルコールに関連した身体や精神の病気は飲酒を止めることで、あるいは飲酒する頻度や量を減らすことで予防が可能なことは明らかですから、早く気付いて、早く飲酒行動を変えることが何より重要です。 
しかし、多くの人が減らそうと思いながらもなかなか減らせないというのが現実でしょう。これまではその人の意志や根性で止めたり減らしたりするしかなかったのですが、最近では簡易介入方法に効果のあることが知られています。これはスクリーニングテストで問題の有無をチェックして、問題のありそうな人にテストの結果をお話しして飲酒のあり方について考えてもらい、対策を一緒に検討することで問題の発生や進行を予防しようというものです。依存症にまで至ってしまうと回復には多くの労力を要し、治療を受けてもすべての人が回復するわけではありませんが、その手前の段階であれば比較的少ない労力で効果的に予防が可能であることが国内外の様々な研究・調査が証明しています。

1. アルコール関連問題のスクリーニング 
アルコール関連問題のスクリーニングテストには色々なものがありますが、AUDIT(久里浜医療センターホームページのお酒の飲み方が気になる方へのページに掲載されています)がよく用いられます。飲酒の頻度や量、さらに多量に飲酒する頻度などの10の質問からなっているもので、世界保健機構(WHO)が中心となって開発されたもので、多くの国で使用されています。

2. 評価の方法 
アルコール関連問題の評価は上述のAUDITで行い、そのスコアに基づいて0~7点(レベルI)、8~15点(レベルII)、16~19点(レベルIII)、20点以上(レベルIV)の4段階のリスクレベルに評価して分類します。レベルIは危険の少ない飲酒と評価されますが、飲酒の危険性などの知識について知ってもらうことは大切です。レベルIIの方は危険な飲酒と評価されるため、飲酒による健康への影響、危険の少ない飲酒について知ってもらうようにします。レベルIIIの方は既に危険な飲酒であることを伝えます。レベルIVの方はアルコール依存症が疑われるため専門医療機関を紹介します。

3. 多量飲酒者への簡易介入 
簡易介入はレベルIIおよびIIIの方が対象となります。その方法にスタンダードなものはありませんが、通常は1回あたり15~30分程度で2~3回実施します。介入の際の重要な要素はFeedback(スクリーニングテスト結果を還元する)、Responsibility(飲む、飲まないは介入を受ける人の自由)、Advice(飲酒を続ければ将来どのような被害が起こり、飲酒量を減らしたり止めたりすればどのような危険を回避できるかに関する助言)、Menu(飲酒量を減らしたり止めたりするための代替方法の提示)、Empathy(暖かい理解と共感)、Self-efficacy(飲酒を減らしたり止めたりすることに自信を高める)の6項目が重要であり、その頭文字をとってFRAMESと呼ばれます。具体的な介入方法の例として久里浜医療センターホームページの東日本大震災関連情報に飲酒問題のスクリーニング・介入ツールが紹介されていますので、ご覧ください。

参考文献

  1. 樋口進ほか (編).健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル. 社会保険研究所, 東京, 2003.
  2. 杠 岳文、遠藤光一、武藤岳夫、吉森智香子、村上 優:アルコール依存と多量飲酒に対する早期介入 精神医学 50: 255-263, 2008.

著者
松下 幸生


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